ミュージカル『生きる』鹿賀丈史ver. 2020/10/12 13:30
宮本亜門演出ミュージカル『生きる』再演を初観劇。
志村喬の顔面の演技!すっごい。
人は死を意識して初めて自分の人生を生き始めるというのは、とっても皮肉。
命も時間も有限なのに、ついずっとあるものと考えてしまうよね。
そんな当たり前のことを無視してきて、あなたは死にますよって言われて初めて
慌てる姿は滑稽。
絶望してから生命力に満ちた輝きを放つのもまた皮肉。
こうゆうのを人間のおかしみと言うのかな。
滑稽でまぬけだけど愛おしい。
このことに早く気づければいいんだけど、
やっぱり若いとすべてが一生続くと根拠なしに信じてしまう部分がある。
頭で分かっていても実感して、実際に行動に移すのは難しい。
けど希望のあるあったかい作品だった。
第一この作品を見れば、余命宣告を受ける前に「すべてのものは有限」という
当たり前のことを自覚して人生を送れる!!
少なくとも渡邊勘治のように、完全に絶望して慌てる必要はなくなるだろう。
渡邊勘次はいわば、みんなの身代わりになって大切なことを教えてくれた現代のジーザス=クライスト=スーパー・スターなんだよ!これはラッキー!
見ながら考えてたんだけど、
明日死ぬと分かっていたら、めいっぱい美味しいごはんを食べて遊びまくると思う。
でも、あと半年だったら何をするだろう。
何ができるだろうって。
ああすごい映画だなあ。
やっぱ名作は名作なんだよ。(当たり前のことを実感として言ってしまってる)
それで本題のミュージカル。
映画では途中で登場する小説家が、狂言回しとなり進行していく楽しいスタイル。
映画と比べて感想言うのはナンセンスだけど、渡邊の本当に居場所のないような
30年間定位置で毎日同じことの繰り返しを行ってきた人生というところがあまり感じ取れなかった。志村喬が化物すぎるだけなんだけど、こういう部分をミュージカルでしっかりと伝えるにはどうしたらいいんだろうか。
考えてみたけど、エピローグ的な部分は音楽に合わせてテンポよくうつしていかないと
上演時間6時間とかになってしまうよね・・・。
まちのおばちゃんたちが役所をたらいまわしにされるシーンは見事予想が的中して、
次々に出現するブースをおばちゃん集団がステージを歩き回り、その場面になるときれいに切り取られた照明がつくシステム。
(たまにこのシーンを舞台にするならこうするかなっていうのを予想して当たると
勝手にうれしい)
ここと渡邊が病院の待合室でおしゃべりおじさんに一方的にいらない話をされるシーンは、ミュージカル!って感じだった。
鹿賀丈史は渡邊にしては、かっこよすぎるというか、まぬけ感がないから
滑稽なおかしみははいけど、リアリティーがあった。
一幕最後の決心を歌うシーンは完全に心を持ってかれた。
二幕はあっという間だったんだけど
やっぱりラストの公園で歌うシーンは頭にこびりついてる。
結果映画と同じように感動した。
どの楽曲も美しく定期的に観たい作品。
鹿賀さんよかった。
そして今日は偶然鹿賀丈史さん70歳のお誕生日で、サプライズカーテンコール!!
楽しかった。